妊娠中は「チーズは食べちゃダメ」と聞いたことはありませんか、実は正しく選べば安全に楽しめるんです。
妊娠中は特に赤ちゃんのためにカルシウムなどの栄養素がたくさん必要な時期。チーズを完全に避けるのではなく、賢く選んで取り入れる方法を知れば、おいしく健康的な妊娠生活が送れます。いつものお気に入りチーズが食べられるのか、どんなチーズなら安全なのか、一緒に見ていきましょう。
妊娠中のチーズ選びで知っておきたいこと
チーズは栄養価が高く、妊娠中の食事に取り入れたい食材です。でも、すべてのチーズが安全というわけではありません。ここでは、妊娠中のチーズ選びの基本知識について説明します。
チーズに含まれる栄養素
チーズには妊娠中に特に必要な栄養素がたっぷり含まれています。何といってもカルシウムが豊富なのが特徴。100gあたり約700mgのカルシウムを含むものもあり、赤ちゃんの骨や歯の形成に欠かせません。
そして見逃せないのがタンパク質です。チーズは良質なタンパク質源で、胎児の成長はもちろん、母体の健康維持にも役立ちます。タンパク質が足りないと疲れやすくなったり、むくみやすくなったりするので、妊娠中はしっかり摂りたい栄養素です。
さらに、ビタミンB群やビタミンAも含まれていて、赤ちゃんの神経系の発達や視力の発達をサポートしてくれます。ただし、ビタミンAは過剰摂取に注意が必要なので、バランスよく取り入れることが大切です。
妊娠中に食べられるナチュラルチーズも多い
チーズは大きく分けて「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類があります。ナチュラルチーズは生乳から作られ、プロセスチーズはナチュラルチーズを原料とし、加熱処理などを施したものです。
「妊娠中はナチュラルチーズは危険」という話を聞いたことがあるかもしれませんが、実はすべてのナチュラルチーズが危険というわけではありません。危険性があるのは、主に「未殺菌乳」から作られたり「製造過程で加熱処理されていない」ナチュラルチーズです。
日本で販売されているナチュラルチーズの多くは、法律により原料乳の殺菌が義務付けられているため、比較的安全。ただし、輸入品の中には未殺菌乳から作られたものもあるので注意してください。
リステリア菌って何?妊婦さんへの影響は?
妊娠中にチーズの摂取に注意が必要なのは、主に「リステリア菌」のせい。リステリア菌は食中毒を引き起こす細菌の一種で、特徴的なのは冷蔵庫内の低温でも増殖できるということ。チーズや生ハムなどの食品に含まれることがあります。
健康な成人がリステリア菌に感染しても、軽い風邪のような症状で済むことが多いのですが、妊婦さんがリステリア菌に感染すると影響が大きいのです。
リステリア症(リステリア菌による感染症)になると、初期は発熱や倦怠感などの風邪に似た症状が現れますが、進行すると流産や早産、死産のリスクが高まります。また、菌が胎盤を通過して赤ちゃんに感染すると、新生児リステリア症を引き起こし、髄膜炎や敗血症などの重篤な症状につながる可能性もあります。
妊娠中も安全に食べられるチーズ
リステリア菌のリスクがあるからといって、妊娠中にチーズをまったく食べられないわけではありません。ここからは、妊娠中でも安心して食べられるチーズについて詳しく見ていきましょう。
プロセスチーズは妊娠中でも安心
プロセスチーズは妊娠中でも安心して食べられます。プロセスチーズは製造過程で70℃以上の高温で加熱処理されるため、リステリア菌などの有害菌が死滅しているからです。
スーパーやコンビニでよく見かける「スライスチーズ」や「ベビーチーズ」、「チーズ入りかまぼこ」などのプロセスチーズは、手軽に摂取できる安全なチーズです。
ただし、プロセスチーズは塩分含有量が比較的多いことに注意が必要です。妊娠中は妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)予防のためにも、塩分の取りすぎには気をつけましょう。1日2〜3切れ程度を目安に、水分をしっかり取りながら楽しむのがおすすめです。
国産ナチュラルチーズの安全性は?
日本では食品衛生法により、ナチュラルチーズの原料乳の加熱殺菌または同等の殺菌効果のある処理が義務付けられています。そのため、国産のナチュラルチーズは比較的安全に食べることができます。
とはいえ、製造方法によっては、殺菌後に二次汚染のリスクもゼロではないので、パッケージの表示をしっかり確認することが大切です。特に「要加熱」の表示があるものは、必ず加熱してから食べるようにしましょう。
カマンベールやブルーチーズなどの熟成タイプの国産チーズも、原料乳が殺菌されていれば基本的には食べられますが、念のため「殺菌乳使用」の表示があるものを選ぶとより安心です。
加熱調理したチーズメニューはOK?
ピザやグラタン、チーズフォンデュなど、加熱調理されたチーズ料理は妊娠中でも安全に食べられます。加熱によりリステリア菌などの有害菌が死滅するため、外国産のナチュラルチーズでも十分な加熱調理をすれば安全です。
目安としては、75℃で1分以上の加熱が必要とされています。ピザやグラタンなどのオーブン料理は通常この条件を満たすので安心です。
ただし注意が必要なのは、レアチーズケーキのような加熱しない調理法です。特に製造時点で加熱処理していないクリームチーズを使ったものは避けるようにしましょう。市販のレアチーズケーキも、原材料表示で使用されているチーズの種類を確認するとよいでしょう。
ホームパーティーなどでチーズプラトーが出されたときは、熟成タイプや青カビタイプは避け、プロセスチーズを中心に食べるのが安心です。もし熟成タイプのチーズを食べたい場合は、事前に製造方法や原材料について確認できたものだけにしてくださいね。
妊娠中も安全にチーズを楽しむための5つのポイント
これまでの知識を踏まえ、妊娠中も安全にチーズを楽しむための具体的なポイントをご紹介します。これらを意識すれば、栄養価の高いチーズを安心して食事に取り入れることができますよ。
パッケージの表示をしっかりチェックする
チーズを購入する際は、パッケージの表示を必ずチェックしましょう。「プロセスチーズ」「加熱殺菌」「殺菌乳使用」などの表示があれば比較的安全です。
特に輸入チーズの場合は、「Pasteurized」(パスチャライズド:殺菌済み)という表示があるかどうかを確認するとよいでしょう。表示がない場合や、「Raw milk」「Unpasteurized」などの表示がある場合は、未殺菌乳を使用している可能性があるので避けた方が無難です。
また、「要加熱」の表示があるものは、必ず加熱調理してから食べるようにしましょう。パッケージに表示されている保存方法や消費期限も守ることが大切です。
正しく保存する
チーズを安全に食べるためには、正しい保存方法も重要です。開封したチーズは、空気に触れると風味が落ちるだけでなく、雑菌が繁殖するリスクも高まります。
基本的には冷蔵庫内(10℃以下)で保存し、他の食品のにおいが移らないようにジッパー付きの密閉袋や密閉容器に入れるとよいでしょう。特に生のチーズは、肉や魚などの生鮮食品とは別の場所に保存することをおすすめします。
また、妊娠中は通常よりも賞味期限に余裕を持って早めに食べきるのが安心です。たとえ賞味期限内でも、見た目や匂いに少しでも違和感があれば食べないようにしましょう。
加熱調理を活用する
妊娠中は特に、チーズを使う料理は加熱調理したものを選ぶとより安全です。75℃以上で1分以上加熱することで、リステリア菌などの有害菌を確実に死滅させることができます。
グリル料理やオーブン料理、フォンデュなど、チーズを加熱して楽しむレパートリーは豊富にあります。たとえば、焼きカマンベールやチーズリゾット、チーズパングラタンなどは、チーズの風味を活かしつつ安全に食べられる料理です。
もし生のチーズをサラダなどに使いたい場合は、プロセスチーズを選ぶか、パッケージで安全性を確認したものを使用しましょう。
適量を守る
チーズは栄養価が高い反面、カロリーや塩分も多い食品です。妊娠中は特に体重管理が重要なので、食べすぎには注意が必要です。
妊娠中のカルシウム摂取量は1日あたり650mgが推奨されていますが、チーズだけでなく、小魚や牛乳、豆腐など他の食品からもカルシウムを摂ることができます。プロセスチーズなら1日2〜3切れ(20〜30g程度)を目安に取り入れるとよいでしょう。
また、チーズは脂肪分も多いので、カロリー過多になりやすいことも念頭に置いておきましょう。妊娠中期から後期にかけては、適切な体重増加を心がけることが大切です。
他の食材とバランスよく取り入れる
妊娠中の食事で最も大切なのは、「バランスよく」食べることです。チーズだけに頼らず、様々な食品から必要な栄養素を摂ることを心がけましょう。
また、チーズと一緒に鉄分を含む食品(ほうれん草や赤身肉など)や、ビタミンCを含む食品(柑橘類やトマトなど)を摂ることで、栄養バランスがさらに良くなります。
まとめ
妊娠中のチーズ選びは、少し気を付ければ安全に栄養豊富なチーズを楽しむことができます。基本的には、プロセスチーズや殺菌乳から作られたナチュラルチーズ、または十分に加熱調理したチーズ料理を選ぶことがポイントです。
パッケージの表示をしっかり確認し、正しく保存して早めに食べきることも大切です。また、チーズだけでなく、様々な食品からバランスよく栄養を摂ることが、妊娠中の健康管理には欠かせません。
妊娠中は赤ちゃんのために色々と制限があって大変ですが、そのぶん赤ちゃんのためにできることがたくさんあると考えれば、前向きに楽しめますよね。チーズの栄養をうまく取り入れながら、健やかなマタニティライフを送りましょう。
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