産後のふとした瞬間に「あの料理、また食べたいな」と思うことってありますよね。茶碗蒸しもそのひとつ。やさしい出汁の香り、ぷるんとした食感、口に入れるとじんわり広がるうま味は、育児で疲れた体にもスーッとなじむ気がします。
でも、授乳中に卵をたくさん食べていいの? 赤ちゃんのアレルギーは大丈夫? そんな不安もふわっと頭をよぎったりするものです。
実は、茶碗蒸しは授乳中の体にとって心強い一品。卵のアミノ酸、出汁のグルタミン酸、やわらかく消化しやすい食感…。知っているようで知らない栄養のこと、アレルギーの正しい知識、そして茶碗蒸しをもっとおいしく取り入れるヒントまで、ここでまとめてお伝えします。
茶碗蒸しに含まれる栄養と授乳中のうれしい効果
卵と出汁が合わさった茶碗蒸しは、見た目以上に授乳期の体をサポートしてくれます。それぞれの食材がどんなふうに体を助けてくれるのか、ひとつずつ見ていきましょう。
卵は授乳期に欠かせない良質タンパク質の宝庫
授乳中は、妊娠前よりも1日のタンパク質必要量が15〜20g多くなります。タンパク質は血液や筋肉をつくる材料であり、母乳の生産にも欠かせない重要な栄養素です。産後の疲れた体の回復にも深くかかわっています。
卵はタンパク質の質を示す「アミノ酸スコア」が100という優秀な食材です。
※アミノ酸スコアとは、食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを示す数値で、100が最高値です。
人間の体内では合成できない8種類の必須アミノ酸がすべてバランスよく含まれており、消化吸収もスムーズです。産後で胃腸が疲れ気味の時期にも、卵はやさしく栄養を届けてくれます。
さらに卵には、ビタミンA・B群・D・E・K、鉄分、亜鉛、セレンなど、授乳期に積極的にとりたいビタミンやミネラルも幅広く含まれています。
和風出汁のグルタミン酸が体をじんわりリラックスさせる
茶碗蒸しに欠かせない和風出汁には、うま味成分のグルタミン酸が豊富です。昆布や干し椎茸に多く含まれるグルタミン酸は、アミノ酸の一種で、脳を落ち着かせるGABA(ガンマアミノ酪酸)を体内で生成する働きがあるといわれています。
育児に追われ、心身ともに張りつめがちな時期に、出汁をしっかりとることは体への小さなやさしさになるかもしれません。
また、母乳にはグルタミン酸が豊富に含まれていることも知られています。母乳中のグルタミン酸濃度は昆布だしとほぼ同等といわれており、赤ちゃんはお腹の中にいる頃からうま味を通じてこの成分を受け取ってきたことになります。授乳中に出汁の効いた料理を楽しむことは、赤ちゃんへの贈りものでもあるのですね。
低カロリー・低脂質で産後の体にもやさしい一品
産後は体重管理が気になる時期でもあります。茶碗蒸しは一人前(約147g)でカロリーが約132kcalと比較的低め。脂質も約7g程度と控えめで、炭水化物も少ないため、授乳中に必要なエネルギーと栄養を効率よく補える、バランスの取れた一品です。
授乳期は妊娠前より1日に350kcal程度多くエネルギーが必要といわれています。
※詳しくは富士製薬工業・授乳中に気をつけたいポイントをご覧ください。
揚げ物や脂っこいものの代わりに茶碗蒸しをうまく取り入れると、食事全体のカロリーを上手に調整しながら、タンパク質やビタミンをしっかりとることができます。消化にもやさしく、食欲が落ちがちな日の軽食としても重宝します。
| 栄養素 | 含有量(目安) | 授乳期との関係 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 約10.2g | 母乳・血液・筋肉の材料 |
| カロリー | 約132kcal | 低カロリーで食べやすい |
| 脂質 | 約7.0g | 消化器への負担が少ない |
| ビタミンD | 豊富 | カルシウム吸収を助ける |
| ビタミンK | 豊富 | 骨の健康維持に関与 |
| 鉄分 | 卵から補給 | 産後の貧血予防に |
| ヨウ素 | 多め | 昆布だし使用時は過剰に注意 |
授乳中の卵とアレルギー、正しく知っておきたいこと
「卵を食べると赤ちゃんにアレルギーが出るのでは」と心配になる方も少なくありません。今の医学でわかっていることをしっかりお伝えします。
授乳中に卵を食べてもアレルギーは起こりにくい
以前は、授乳中に卵や牛乳を食べると赤ちゃんにアレルギーが出やすいと考えられていた時代もありました。でも今は考え方が変わっています。
妊娠中や授乳中に特定の食品を食べることで赤ちゃんのアレルギーが増えるという科学的根拠はなく、むしろ食事制限は母子ともに栄養障害を引き起こすリスクがあるとして、現在の専門機関は食事制限を推奨していません。
「食物アレルギー診療ガイドライン」にも、食物除去はアレルギー予防に有効ではなく、母子の栄養障害を招く恐れがあると明記されています。
※詳しくは母子栄養協会・妊娠授乳中の卵・牛乳アレルギー予防についてをご覧ください。
母乳を通じて赤ちゃんに移行する卵タンパクは微量で、多くの場合、アレルギー症状を引き起こすほどの量ではありません。自己判断で卵を完全にやめるよりも、バランスよく食べることのほうが大切です。
卵を食べる量とアレルギーの最新研究
近年の研究では、授乳中の母親が卵を食べることと赤ちゃんの卵アレルギー発症との間に、有意な差はなかったと報告されています。
国内10施設が参加したランダム化比較試験では、授乳中に卵を1日1個食べた母親から生まれた赤ちゃんの卵アレルギー発症率は9.3%だったのに対し、卵を除去したグループでは7.6%と、統計的な差はほとんどなかったという結果が出ています。
また、母乳中に含まれる卵タンパクの量は非常に微量であり、赤ちゃんの腸管を通じて「免疫寛容(アレルギーを起こしにくくする仕組み)」を育む方向に働く可能性も示唆されてきています。
茶碗蒸しに使われる具材の注意点
茶碗蒸し自体の安全性は高いですが、具材によっては少し気をつけたいものもあります。
まず生のエビは加熱が必要で、半生では食中毒リスクがあります。茶碗蒸しに入れる場合は必ず蒸し上がりをしっかり確認しましょう。
かまぼこなどの練り物は少量の塩分が含まれています。かまぼこ1切れ(10g)あたりの塩分は約0.3g。1〜2切れ程度ならさほど気にする量ではありませんが、他の食事でも塩分をとっている場合は全体量のバランスを意識しましょう。授乳期の女性の食塩目標量は1日6.5g未満です。
授乳中の茶碗蒸し、もっとおいしく栄養的に食べるには
基本のことがわかったら、茶碗蒸しをさらに賢く活用するヒントをご紹介します。具材の選び方ひとつで、栄養価をぐっと高めることができます。
具材を工夫して鉄分・DHA・カルシウムをプラス
産後に不足しやすい栄養素は鉄分、DHA(オメガ3脂肪酸)、カルシウムです。茶碗蒸しはこれらを補いやすい具材とも相性抜群です。
鉄分を補いたいときはほうれん草や小松菜を少量刻んで入れるのがおすすめ。DHAを意識するなら、蒸した鮭やしらす干しを具材に加えると、脳の発達にかかわる栄養素を自然に摂ることができます。カルシウムを補いたい場合は、小えびや豆腐を入れてみましょう。
出汁をしっかりきかせた茶碗蒸しに、鮭や葉物野菜を加えるだけで、一品で複数の栄養素をカバーできる優秀メニューになります。
具材を変えながら毎日食べても飽きにくいのが茶碗蒸しの良さ。春は三つ葉、秋はぎんなん、冬は百合根と旬を取り入れると季節のやさしさも感じられます。
昆布だしのヨウ素と過剰摂取に気をつけたい話
茶碗蒸しの出汁に昆布をたっぷり使っている場合、ヨウ素の摂りすぎに注意が必要です。ヨウ素は甲状腺の働きに欠かせないミネラルですが、授乳期に過剰摂取すると赤ちゃんの甲状腺機能に影響する可能性があるとされています。
茶碗蒸し一人前に含まれるヨウ素は約690μg(出汁の種類による)。授乳期の耐容上限量は2,000μgとされていますが、一人前でその半分程度を超えることもあります。
毎日大量に食べるのでなければ問題ありませんが、わかめや昆布などの海藻をすでにたくさん食べている場合は、出汁を昆布のみに頼らず、かつお節や鶏ガラと組み合わせたブレンド出汁を使うのもひとつの方法です。
市販の茶碗蒸しや電子レンジ調理の活用も
授乳期は休む時間もままならないことが多いもの。毎回手作りするのが難しいときは、市販の茶碗蒸しや電子レンジ調理を遠慮なく頼んでください。
市販の茶碗蒸しは多少の添加物や調味料が含まれますが、たまに利用する程度であれば問題ありません。成分表示を確認して塩分量が気にならないものを選ぶと安心です。
電子レンジ調理の場合は、加熱ムラに気をつけることが大切です。卵液が半熟のまま食べると食中毒のリスクがあるため、竹串をさして澄んだ液体が出てくることを必ず確認してから食べましょう。作り置きする場合は冷蔵で1〜2日以内を目安に食べきるようにしてください。
まとめ
授乳中の茶碗蒸しは、タンパク質・ビタミン・ミネラルをバランスよく含む、産後の体にうれしい一品です。卵のアミノ酸スコアは100という良質さで、出汁のグルタミン酸は疲れた体をじんわりほぐしてくれます。
「卵を食べると赤ちゃんにアレルギーが出るかも」という不安は、現在の医学的知見からは根拠がないとされています。自己判断で食事制限をするよりも、バランスよく食べ続けることが母子の健康のためになるという考え方が、今の専門家の共通見解です。
もし赤ちゃんの湿疹が気になる場合や、アレルギーが疑われる症状が出た場合は、小児科やアレルギー科の先生に相談してみてください。自分だけで抱え込まなくて大丈夫です。
具材を工夫して鉄分やDHAを補ったり、出汁をブレンドしてヨウ素の摂りすぎを防いだり…。茶碗蒸しは、少し意識するだけでさらに心強い味方になってくれます。赤ちゃんのお世話で手が離せない日も、温かくてやさしいこの一品を、ぜひ食卓に取り入れてみてくださいね。
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