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授乳中に飯寿司(いずし)を食べても安心?腸内環境への効果と塩分過多に注意

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授乳中の食べ物

この記事は栄養士によって監修されています

この記事を監修された先生

中村あゆみ先生

中村 あゆみ 先生

東京農業大学応用生物科学部卒業。食品企業での勤務経験を経て、都内保育園で栄養士として従事。妊娠中のお母さんへの栄養相談や食育活動に携わる。現在は茨城県内のこども園で子供たちの食育指導や献立作成を担当。茨城県栄養士会所属。

中村先生の詳細プロフィール

お正月やハレの日の食卓にそっとのぼる、北海道・東北の郷土料理「飯寿司(いずし)」。義実家や実家からいただいた、あるいは産後の食事に出てきた、という経験はないでしょうか。「授乳中でも食べていいの?」と、スマホで検索したものの、「発酵食品だから体によさそう」「でも生魚が入っているから不安」と、どっちが正しいのか迷ったまま……そんな経験、きっとあるはずです。

実は、授乳中に飯寿司を食べることは、正しい知識さえあれば決して怖くありません。乳酸菌たっぷりの発酵食品としての恵みと、塩分やボツリヌス菌といった注意点をきちんと理解すれば、産後の体にとって心強い一品になることもあります。この記事では、気になるポイントをぜんぶまとめてお届けします。

飯寿司(いずし)ってどんな食べ物?授乳中でも食べていい基本を知ろう

そもそも飯寿司とはどんなものか、から整理しておきましょう。発酵食品としての魅力と、生魚を使っていることへの疑問、ちゃんと両方に答えていきます。

飯寿司(いずし)は発酵食品の一種。その基本を理解しよう

飯寿司というのは、魚と野菜を米麹に漬け込み、乳酸発酵させて作るなれずしの一種です。農林水産省の「うちの郷土料理」でも紹介されているように、北海道から東北地方の寒冷地に伝わる冬の保存食で、ホッケや鮭、ハタハタ、ニシン、サンマなど地域によってさまざまな魚が使われます。大根・にんじん・キャベツ・しょうがといった野菜も一緒に漬け込むのが特徴で、米・魚・野菜がひとつになった、いわば「おかずもごはんも全部入り」のような豪華な発酵食品です。

お正月料理として古くから親しまれてきた背景があるだけに、産後に義実家などでふるまわれることも多いかもしれません。「ありがとうございます、でも授乳中なので……」と遠慮するかどうか、迷いますよね。結論から先にお伝えすると、市販品の飯寿司を少量食べる程度であれば、授乳中でも基本的に問題ありません。ただし、いくつか知っておくべき注意点があります。それを一つひとつ確認していきましょう。

授乳中に生魚を食べても大丈夫?水銀や食中毒への疑問

妊娠中は「生魚は水銀が怖い」「食中毒のリスクがある」と言われて、お寿司や刺身をがまんしていた方も多いはずです。では授乳中はどうなのでしょうか。

まず水銀についてですが、厚生労働省の資料によると、母乳を介して赤ちゃんが摂取する水銀量は低いとされており、授乳中の母親は魚介類の摂取制限の対象外とされています。妊娠中は胎盤を通じて直接赤ちゃんに影響が及ぶため注意が必要でしたが、授乳中は経路が異なるため、水銀の心配はほとんどしなくてよいということです。

次に食中毒ですが、万が一食中毒になったとしても、食中毒の菌が母乳を通じて赤ちゃんに移行することはないとされています。ただ、授乳中に食中毒で体調を崩してしまうと、授乳自体が大変になったり、脱水症状を引き起こしたりするリスクがあります。「赤ちゃんに影響がない=自分が気をつけなくていい」ではなく、母体の体調を守ることが大切という視点を忘れずに。

飯寿司に使われる魚には、DHAやEPAといった赤ちゃんの脳の発達に役立つ栄養素も含まれています。魚介類から摂れる良質なたんぱく質も、産後の体の回復を助けてくれる大事な栄養源です。

授乳中の飯寿司、どのくらいなら食べていいの?

飯寿司を授乳中に食べる際の量の目安について、具体的に考えてみましょう。飯寿司は発酵食品ですが、漬け込む際にたっぷりの塩を使います。製品によって差はあるものの、塩分がしっかり含まれているため、一度にたくさん食べることは避けるのが賢明です。

また、飯寿司に使われる魚の種類にも注目してみてください。鮭・ホッケ・カレイなどは比較的脂肪分が少なく、授乳中でも食べやすい魚です。一方、脂ののった青魚系は乳腺が詰まりやすくなる可能性を指摘する声もあるため、心配な場合は白身魚系の飯寿司を選ぶと安心感があります。

一回の食事でお皿に小盛り程度(50〜80g程度)をゆっくり味わうくらいのスタンスが、授乳中の飯寿司との上手なお付き合い方です。「ちょっとだけいただく」という感覚で、おかずのひとつとして取り入れるのがちょうどよいでしょう。

飯寿司の乳酸菌が授乳中の腸内環境にもたらす効果とは

飯寿司の大きな魅力のひとつが、乳酸発酵によって生まれる乳酸菌です。産後の腸内環境はデリケートになりやすいからこそ、発酵食品の力を上手に借りたいところ。どんな効果が期待できるのか、丁寧に見ていきましょう。

乳酸菌が腸に届く!発酵食品としての飯寿司の強み

飯寿司は低温でじっくりと乳酸発酵させて作られます。米と米麹の糖が乳酸菌のエサになり、増えた乳酸菌が魚のたんぱく質の分解を助け、旨みをアップさせながら同時に保存性も高めるという、よく考えられた仕組みで成り立っています。飯寿司や漬物を多く食べる地域の人の便秘率が低いというデータもあるほどで、腸内環境を整えるお薬のような役割をしてくれるとも言われています。

産後は赤ちゃんのお世話でなかなかゆっくり食事ができず、食事内容が偏りがちになることもあります。そんな中で発酵食品を少し取り入れると、腸のはたらきをサポートしてくれます。便秘になりやすい産後の体には、乳酸菌の力はじんわりと心強いものがあります。

さらに、飯寿司にはアミノ酸・ミネラル・ビタミン群(A・B・D・E・K)も豊富に含まれており、中でもビタミンB12が多く含まれ、疲労回復や貧血予防に役立つとも言われています。産後の貧血が心配な方にとって、鉄分補給と合わせてビタミンB12を摂れる飯寿司は、小さな味方になってくれるかもしれません。

乳酸菌は腸内環境を整え、便秘予防に役立つ可能性があります。魚介由来の良質なたんぱく質は、産後の体の回復を助ける大切な栄養素です。そしてDHA・EPAは赤ちゃんの脳の発達に関わる栄養素を母乳に届けるサポートになります。

特にビタミンB12は疲労回復・貧血予防の観点から、授乳中に意識して摂りたい栄養素のひとつです。カルシウムやミネラルについても、魚の骨ごと漬け込まれることが多い飯寿司は、ミネラル補給にも一役買ってくれます。

産後の腸内環境が整うと、母乳にもいい影響が?

腸内環境と母乳の質の関係は、少しずつ研究が進んでいる分野です。授乳中は通常よりも多くのエネルギーを消費するため、バランスのとれた食事と腸の健康が、全体的な体調を支える土台になっています。

腸がすっきり動いていると、栄養の吸収効率がよくなります。逆に便秘がちになると、お腹がつらいだけでなく、全体的にだるさや重さを感じやすくなることも。産後は睡眠も十分に取れないことが多いですから、腸から元気にしておくことが、巡り巡って母乳づくりにもよい影響をもたらすと考えられます。

乳酸菌は体の中でゆっくりはたらきます。一回食べたからといってすぐに効果が出るわけではありませんが、納豆・みそ汁・ぬか漬けなどの発酵食品と合わせて、日々の食事にコツコツ取り入れていくことが、腸内環境を育てるいちばんの近道です。飯寿司はその仲間のひとつとして、上手にお付き合いしていきましょう。

飯寿司と他の発酵食品の比較:授乳中に選ぶとしたら?

産後の食卓でよく登場する発酵食品と飯寿司を比較してみましょう。

発酵食品 主な菌の種類 授乳中のメリット 授乳中の注意点
飯寿司(いずし) 乳酸菌(低温発酵) 腸内環境サポート・DHA・EPA・ビタミンB12 塩分が高め・食べすぎ注意・自家製はボツリヌス菌に注意
ヨーグルト 乳酸菌・ビフィズス菌 カルシウム補給・腸内環境サポート 乳製品の摂りすぎは乳腺に影響する場合も
納豆 納豆菌 鉄分・たんぱく質・ビタミンK2 特になし(授乳中に積極的におすすめ)
みそ 麹菌・乳酸菌 アミノ酸・腸内環境サポート 塩分に注意(汁ごと摂る場合)
ぬか漬け 乳酸菌 食物繊維・腸内環境サポート 塩分が多めになりやすい

飯寿司は発酵食品としての栄養的な魅力がたっぷりある一方で、塩分が高めというのが気になるところです。他の発酵食品と組み合わせながら、少量ずつ楽しむのが賢いやり方です。

【塩分過多とボツリヌス菌】授乳中に飯寿司を食べるときの注意点

飯寿司を授乳中に取り入れるうえで、きちんと知っておきたい注意点が2つあります。塩分の問題と、ボツリヌス菌のリスクです。怖がりすぎる必要はありませんが、正確に知っておくことが大切です。

飯寿司の塩分はどのくらい?授乳中の塩分管理に気をつけよう

飯寿司を作るとき、魚をしっかり塩漬けにしてから水で塩抜きするという工程があります。この塩加減が飯寿司の味の決め手とも言われますが、完成品にも一定量の塩分が残ります。また、食べる際にわさび醤油をつけたりすることで、さらに塩分が加算されます。

授乳中の食事摂取基準では、女性の1日の食塩摂取目標量は6.5g未満(日本人の食事摂取基準2020年版)とされています。産後は体全体の回復中であり、塩分の摂りすぎは血圧上昇やむくみにつながりやすい時期でもあります。また、大阪市の資料によると、ナトリウム(塩分)の摂取が増えるとカルシウムの吸収が悪くなるとも指摘されており、授乳中にカルシウムをしっかり摂りたい時期にはなおさら注意が必要です。

飯寿司を食べるときは、醤油は使わずにそのままいただくのがおすすめです。発酵の旨みと酸味でそれだけで十分においしく食べられますし、余計な塩分を加えずにすみます。他の食事の塩分も全体的に意識しながら、飯寿司はあくまで少量のおかずのひとつとして位置づけることがポイントです。

飯寿司を食べるときは、一度に食べる量をお皿に少量(50〜80g程度)を目安にするのが安心です。醤油・わさびなどの追加調味料はできるだけ控え、発酵のうまみをそのまま味わいましょう。

同じ日の他の食事(みそ汁・漬物・加工食品など)の塩分にも気を配ることが大切です。むくみが気になる日は、飯寿司は控えましょう。

ボツリヌス菌のリスク:飯寿司との関係を正しく理解しよう

飯寿司に関して、食品衛生の観点から知っておいてほしいのがボツリヌス菌の問題です。ボツリヌス菌は土壌や河川の泥砂中などに広く存在する菌で、酸素の少ない環境(缶詰や発酵食品の中など)で増殖し、強力な神経毒を産生します。過去に飯寿司を原因食品とするボツリヌス食中毒の事例が国内で報告されており、特に北海道・東北地方で発生してきた歴史があります。

「えっ、怖い!」と思った方もいるかもしれませんが、落ち着いて読んでください。ボツリヌス菌による食中毒事例の多くは、温度管理が不十分な自家製飯寿司が原因であることがほとんどです。市販品は衛生管理が徹底されており、冷蔵流通・適切な温度管理のもとで製造されているものを選べば、リスクはぐっと下がります。

なお、授乳中の大人がボツリヌス菌を含む食品を口にしても、母乳を通じて赤ちゃんに毒素が移行することはありません(乳児ボツリヌス症は赤ちゃんが直接ボツリヌス菌を口にした場合の病気です)。しかし、授乳中に自分自身が食中毒になってしまうと、授乳やお世話が続けられなくなってしまいます。

市販品と自家製、どちらが安心?選び方のコツ

飯寿司を安心して食べるための選び方について、整理してお伝えします。

市販の飯寿司は、温度管理や製造工程の衛生管理が法律で定められており、スーパーや通販で購入できるものは基本的に安全性が確認されています。購入する際は、必ず「要冷蔵」の表示を確認し、消費期限を守って早めに食べましょう。開封後は日をまたがず食べきることが大切です。

一方、自家製飯寿司は授乳中は慎重に。温度管理が難しく、ボツリヌス菌が増殖するリスクが市販品よりも高くなる可能性があります。義実家や実家でいただく手作りのものについては、作り方や保存状態が確認できる間柄であれば安心感が増しますが、不安な場合は少量だけいただく、あるいは体調のよいときに限るなどの判断も必要です。

市販品を選ぶ場合は「要冷蔵」表示と消費期限を必ず確認しましょう。開封後はその日中か翌日中に食べきることが基本です。見た目に変色がある、変なにおいがするなどの異変を感じたら食べないこと。また、自家製飯寿司は授乳中には特に慎重に判断を。心配なときは少量にとどめておくのがおすすめです。

まとめ:飯寿司は「少量×上手に」が授乳中のコツ

授乳中に飯寿司を食べることについて、結論をまとめると——市販品を少量いただく程度であれば、授乳中でも基本的に問題なく楽しめます。北海道・東北の寒い地でじっくり育まれた乳酸菌と、魚介の栄養がたっぷり詰まったこの伝統食は、腸内環境を整え、産後の体をしなやかに支えてくれる力を持っています。

ただし、塩分が高めという点だけはしっかり意識してほしいのです。醤油をつけずにそのまま食べる、一度に食べる量を少量にとどめる、他の食事の塩分を意識する——このシンプルな3つのことを守るだけで、飯寿司は産後の食卓に温かくなじんでくれます。

ボツリヌス菌についても、市販品・冷蔵管理のものを選べば過度に怖がる必要はありません。大切なのは正しい情報を持つこと。知ることで、食卓に安心が戻ってきます。

産後は何を食べるにも「これ食べていいの?」と気になるものが山ほど出てきます。でも、一つひとつ調べて確認しながら、自分の体と赤ちゃんのために向き合っているその姿勢は、それだけでもう十分にすばらしいことです。ゆったりと、焦らずに、旬の発酵食品の恵みも少しずつ取り入れながら、産後の食生活を楽しんでいきましょう。

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