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鯉のうま煮が妊娠中に食卓に出たら?知っておきたい注意点をまとめました

妊娠中の食べ物

この記事は栄養士によって監修されています

この記事を監修された先生

中村あゆみ先生

中村 あゆみ 先生

東京農業大学応用生物科学部卒業。食品企業での勤務経験を経て、都内保育園で栄養士として従事。妊娠中のお母さんへの栄養相談や食育活動に携わる。現在は茨城県内のこども園で子供たちの食育指導や献立作成を担当。茨城県栄養士会所属。

中村先生の詳細プロフィール

お正月やお盆の帰省先で、鯉のうま煮が食卓に並んだことはありませんか。山形県置賜地方や長野県佐久地方など、内陸部の食文化に根付いたこの料理は、ハレの日の定番として長く愛されてきました。妊娠中だと、食べていいのかどうか、つい気になるところです。

鯉という淡水魚を食べたことのない方も多く、「川魚って妊婦が食べても平気?」「甘辛く煮た料理って体に影響ない?」という疑問が浮かぶのも自然なことです。

先に結論をお伝えすると、鯉のうま煮は妊娠中でも少量であれば楽しめます。鯉は、厚生労働省の水銀に関する妊婦向け注意事項の対象になっていない魚です。ただし塩分と糖分が高めの調理法のため、食べる量の調整が必要です。

この記事では、鯉という魚の特徴・水銀の心配が少ない理由・甘辛味の煮物と妊娠中の体への影響・上手な食べ方まで、順番にお伝えします。

鯉のうま煮はどんな料理?日本の食文化としての背景

鯉のうま煮は、鯉を輪切りにして醤油・砂糖・酒・みりんで甘辛く長時間煮込んだ料理です。煮崩れしないよう丁寧に火を入れるため、身はほろりとやわらかく、骨まで食べられる場合もあります。農林水産省「うちの郷土料理」でも紹介されている、日本の伝統食のひとつです。

山形県では、1802年に上杉鷹山公が内陸部の食料事情を改善するため鯉の養殖を奨励したことが文化の始まりとされています。以来、鯉のうま煮は婚礼・正月・お盆のハレの日料理として定着してきました。

鯉という魚の栄養価を知っておこう

食品成分データベース(文部科学省)によると、鯉(養殖・生・100gあたり)の栄養成分は次のとおりです。

栄養素 含有量(100gあたり)
エネルギー 約157kcal
たんぱく質 約17.7g
脂質 約10.2g
ビタミンB12 約10.0μg
ビタミンD 約14.0μg

DHA・EPAも含まれていて、淡水魚のなかでは脂質系の栄養素が比較的豊富な魚です。ビタミンB12は、成人の推奨量(1日2.4μg)の4倍以上を100gで含んでいます。ビタミンB12は赤血球の形成を助ける栄養素で、妊娠中は葉酸とあわせてとりたい成分です。

アルギニンというアミノ酸も含まれていて、疲労回復に関わる栄養素として知られています。妊娠中の体づくりという視点でも、鯉はバランスの良いたんぱく質源です。

鯉と水銀の関係|厚生労働省の注意事項で確認

妊娠中の魚介類で気になりやすいのが水銀です。厚生労働省は、食物連鎖の上位にいる大型魚(メカジキ・クロマグロ・キンメダイなど)について、妊婦向けに食べる量の目安を示した注意事項を設けています。

鯉は、この注意事項の対象魚種に含まれていません。水銀は食物連鎖の上位にいる大型の肉食魚ほど高くなる傾向があり、鯉のような淡水の雑食魚は比較的低い傾向にあります。

※参考:魚介類に含まれる水銀について(厚生労働省)

食べすぎなければ、水銀の面で特別に心配する必要はありません。

鯉は、厚生労働省の妊婦向け水銀注意事項の対象魚種に含まれていません。水銀は大型の肉食魚ほど高くなる傾向があり、鯉のリスクは比較的低いと考えられています。

「鯉が母乳の出を良くする」という言い伝えについて

鯉には「母乳の出を良くする」「産後の回復を助ける」という言い伝えが日本各地に残っています。佐久地方では、産後のお母さんに鯉を食べさせる慣習があったとも伝えられています。中国の薬学書「本草綱目」にも「乳汁を下し」と記されていて、古くから産後の体に良い食材と考えられてきたことがわかります。

ただし現代医学の観点では、鯉と母乳量の間に直接的な因果関係を示す根拠は確立されていません。豊富なたんぱく質・ビタミン・DHAなどが産後の体づくりに役立つことは期待できますが、「食べれば母乳が増える」とまでは言えない状況です。

言い伝えを信じすぎる必要はありませんが、鯉はたんぱく質が豊富で消化がよいとされる魚です。妊娠中に鯉のうま煮を楽しみつつ、産後もおなじ食材で体をいたわるという食の連続性は、日本の食文化の豊かさのひとつです。

甘辛い味付けと妊娠中の体|塩分・糖分の影響を理解しよう

鯉のうま煮でいちばん気をつけたいのは、塩分と糖分です。醤油・砂糖・みりんを使って長時間煮込む調理法のため、1切れに含まれる塩分・糖分は決して少なくありません。

妊娠中の塩分目標量と鯉のうま煮の塩分

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、妊婦の食塩相当量の目標量は1日6.5g未満とされています。これは成人女性の目標量と同じ水準ですが、日本人の平均的な塩分摂取量は9〜10g程度といわれていて、多くの方がすでに目標を超えている状況です。

鯉のうま煮は甘辛い煮物のため、1切れ(約60〜80g)あたりの食塩相当量が1〜2g台になる可能性があります。お正月によく出る他の塩分の多い料理(数の子・田作り・お雑煮など)と重なると、1日の塩分総量が増えやすくなります。

鯉のうま煮は、お正月に他の塩分の多い料理と一緒に食べる場面が多い料理です。1〜2切れを目安に量を抑えて、他のおかずは薄味を意識しましょう。

妊娠高血圧症候群と塩分の関係

妊娠中の塩分過多が特に気になる理由のひとつが、妊娠高血圧症候群のリスクです。妊娠20週以降に血圧が上がる状態で、重症化すると母子ともに影響が出る可能性があります。塩分の多い食事が直接の原因になるわけではありませんが、高塩分の食習慣は血圧上昇のリスク要因のひとつとされています。

もともと血圧が高め・むくみが出やすい・過去の妊娠で高血圧を経験した、という方は、特に塩分管理を意識することが大切です。

甘露煮・うま煮の糖質と妊娠糖尿病

鯉のうま煮には砂糖・みりんが多く使われます。甘辛い味付けは食欲をそそりますが、食べすぎると糖質のとりすぎになることもあります。

妊娠中はホルモンの影響でインスリンの働きが弱まりやすく、血糖値が上がりやすい状態になります。妊娠糖尿病は自覚症状が出にくいため、糖質の多い食品を食べる量には意識的に気をつけることが大切です。

妊娠中に鯉のうま煮を楽しむための工夫

食べてはいけないわけではない料理を、どう上手に楽しむかがポイントです。量・組み合わせ・頻度を意識するだけで、お正月の食卓を楽しめます。

食べる量と頻度のめやす

妊娠中に鯉のうま煮を食べる場合は、1回あたり1〜2切れを目安にしましょう。一度に大量に食べることを避けて、行事のときに少量楽しむ食べ方なら、塩分・糖分の心配は小さくなります。

お正月の食卓は塩分・糖質が全体的に増えやすいので、鯉のうま煮を食べる日は他のおかずを薄味にしたり、量を減らしたりしておくと、1日のバランスが取りやすくなります。

一緒に食べると良い食材の組み合わせ

塩分の多い食事と組み合わせたいのが、カリウムを含む野菜や果物です。カリウムにはナトリウムの排出を助ける働きがあり、塩分の過剰な蓄積を防ぐのに役立ちます。

おせちのなかでは、ほうれん草のお浸し・ゆり根の煮物・里芋の煮物などがカリウムを含む食材です。うま煮と一緒に食べることで、塩分バランスを整えやすくなります。また、食物繊維を含む根菜類は食後の血糖値の上昇をゆるやかにするため、うま煮の糖分対策にも役立ちます。

カリウムを含むほうれん草・里芋・にんじんなどをうま煮と一緒に食べることで、塩分の排出を助けられます。おせちのなかの野菜おかずと組み合わせるのがおすすめです。

食べた後は水分補給を忘れずに

塩分の多い食事のあとは、水分をこまめに補給することが大切です。妊娠中は血液量が増えるため、ふだんから水分補給が欠かせません。麦茶・白湯・ノンカフェインのお茶などを食後にいただきましょう。一度に大量に飲むのではなく、少量を何度かに分けて飲む習慣が体への負担を減らします。

まとめ|鯉のうま煮は量を守って楽しめる妊娠中の郷土料理

妊娠中に鯉のうま煮を食べること自体は、過度に心配する必要はありません。鯉は厚生労働省の水銀注意事項の対象になっていない魚で、たんぱく質・ビタミンB12・DHAなど、妊娠中に嬉しい栄養素も含んでいます。

気をつけたいのは、調理法からくる塩分と糖分です。甘辛く煮込んだうま煮は1切れあたりの塩分が高くなりやすいため、1〜2切れを目安に楽しみましょう。他のお正月料理と組み合わせるときは全体の塩分バランスを意識して、カリウムの多い野菜と一緒に食べるのがおすすめです。

食べてはいけない料理ではなく、量と付き合い方を知ることで楽しめる郷土の味です。帰省先でのお正月をおなかの赤ちゃんと一緒に過ごしながら、日本の食文化を感じる機会にしてみてください。

お正月は家族が集まり、たくさんの料理が並ぶ特別な時間です。妊娠中だからといってすべてを遠慮していては、食卓の楽しさが半減してしまいます。正しい知識を持って上手に楽しむことが、心身ともに健やかな妊娠期を過ごすことにつながります。

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