秋田の伝統食として親しまれてきたハタハタ寿司は、独特の旨みと発酵の香りが魅力の郷土料理です。好きな方にとって、妊娠中に食べていいかどうかは気になるところです。
「発酵食品は体に良いと聞くけれど、生の魚が使われているから妊娠中はダメ?」と迷う方も多いはずです。漬けた魚をそのまま食べるなれずし系の食品には、妊娠中に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
この記事では、ハタハタ寿司の特徴と、妊娠中に注意したい3つのリスク(発酵食品・塩分・生魚)を整理して、食べ方の判断材料をお伝えします。
先に結論をお伝えすると、未加熱のまま食べるのは避けて、食べるなら十分に加熱するのが安全側の選択です。理由を順番に見ていきましょう。
ハタハタ寿司とはどんな食品?秋田の発酵食品の特徴を知ろう
ハタハタ寿司(はたはた寿司)は、秋田県を代表する郷土料理です。ハタハタを米・塩・麹などと一緒に長い時間をかけて発酵させた「なれずし(熟れずし)」の一種で、数百年の歴史を持つ伝統食品です。まずは特徴から見ていきましょう。
ハタハタ寿司の製法と発酵の仕組み
ハタハタ寿司は、ハタハタを塩漬けにしてから、米・にんじん・麹・砂糖などを加えた漬け床に漬け込み、数週間から数か月かけて発酵させて作ります。発酵の主体は乳酸菌で、酸性の環境ができることで保存性が高まり、独特の旨みと酸味が生まれます。
「なれずし」は、米と魚を一緒に発酵させる日本古来の製法です。現代の握り寿司とはまったく別の食品で、仕上がりは「漬物」に近い質感になります。
発酵の期間や工程は家庭や製造元によってさまざまで、品質にも幅があります。市販品は製造管理されたものが一般的ですが、手作りや直売所のものは管理条件がそれぞれ異なります。
ハタハタ(魚)の栄養素と特徴
ハタハタはカミナリウオとも呼ばれる白身魚で、秋田県の県魚に指定されています。冬に日本海側へ押し寄せることで知られています。
栄養面では、良質なたんぱく質・カルシウム・DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)を含みます。DHAは赤ちゃんの脳や眼の発達に関わる栄養素として知られていて、妊娠中にとりたい成分のひとつです。
ハタハタは、まぐろやきんめだいのような大型魚に比べて水銀が少ないとされる魚です。水銀という観点では、ハタハタそのもののリスクは比較的低いと考えられています。
ただし、ハタハタ寿司は加熱せずに作る発酵食品です。次の項目でお伝えする食中毒のリスクを、あわせて知っておく必要があります。
| 栄養素 | 特徴 | 妊娠中の意義 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 良質な動物性たんぱく | 赤ちゃんの発育・母体の回復に必要 |
| カルシウム | 骨・歯の構成成分 | 赤ちゃんの骨格形成をサポート |
| DHA | 不飽和脂肪酸 | 赤ちゃんの脳・眼の発達に関わる |
| 水銀 | 含有量は低め(中位魚) | 大型魚に比べてリスクは低い |
なれずしと生魚の違い―発酵がどこまでリスクを下げるか
なれずしの発酵は乳酸発酵が中心で、酸性の環境によって多くの腐敗菌が増えにくくなります。生のお刺身と比べれば、一定のリスク低減はあります。
ただし、発酵は「殺菌」ではありません。特にリステリア菌は酸性や塩分に比較的強く、発酵食品でも生き残ることがあります。
厚生労働省は、妊娠中は加熱していないスモークサーモン・生ハム・ナチュラルチーズなどを避けるよう呼びかけています。ハタハタ寿司も「加熱せずにそのまま食べる魚介の加工食品」という意味で、これらに近い性質を持っています。
妊娠中にハタハタ寿司が心配な3つのリスク
ここからは、妊娠中に確認しておきたい3つのリスクを、ひとつずつ見ていきます。
生魚・発酵食品とリステリア菌のリスク
ハタハタ寿司で妊娠中に最も気をつけたいのが、リステリア菌による食中毒です。
リステリア症は、健康な大人ではほとんど症状が出ないか、軽い発熱程度で治まることが多い感染症です。ただ、妊娠中は免疫の変化で感染しやすく、重症化もしやすい状態にあります。感染すると、胎盤や羊水を通じて赤ちゃんに影響が及ぶおそれがあります。
※詳しくは厚生労働省「リステリアによる食中毒」をご覧ください。
リステリア菌は冷蔵庫の中(4℃前後)でも増えるという特徴があります。「冷蔵保存しているから安全」とは言えないため、加熱していない発酵魚食品には特に注意が必要です。
発酵が深く進んで酸性が強いものはリスクが下がる可能性はありますが、家庭や直売所のものの発酵状態を外から確かめる方法はありません。
ハタハタの水銀含量と胎児への影響
妊娠中の魚については、水銀(メチル水銀)が赤ちゃんの神経発達に影響するおそれがあるとして、一部の魚種に食べる量の目安が設けられています。
厚生労働省の注意事項で対象になっているのは、まぐろ類やきんめだいなどの大型魚です。ハタハタは対象魚種に含まれていません。水銀という観点では、ハタハタのリスクは比較的低いと考えられます。
※詳しくは厚生労働省「魚介類に含まれる水銀」をご覧ください。
塩分の高さと妊娠中の血圧管理
ハタハタ寿司は塩漬けの工程を含むため、塩分が高めの食品です。製品によって差はありますが、市販品の栄養成分表示には100gあたり食塩相当量2.8gという例があり、1食(30〜50g)に換算するとおよそ0.8〜1.4gになります。
妊婦の食塩相当量の目標は1日6.5g未満です(厚生労働省「日本人の食事摂取基準2025年版」・成人女性の目標量)。ハタハタ寿司を1食分食べると、目標のおよそ1〜2割をとる計算になります。
妊娠高血圧症候群は、塩分のとりすぎとの関連が深いとされています。ハタハタ寿司を食べた日は、みそ汁や漬物などほかの塩分を控えて、1日トータルで調整することが大切です。
「伝統食だから体に良い」というイメージだけで判断せず、塩分の数字を確かめながら量を決めるようにしましょう。
妊娠中にハタハタ寿司を食べる場合の判断基準と代替策
リスクがわかったところで、妊娠中にハタハタ寿司とどう付き合うかを整理します。
リスクを理解したうえでの食べ方の考え方
厚生労働省などの公的機関が、ハタハタ寿司を名指しで禁止しているわけではありません。ただ、「加熱していない魚介の発酵食品」という分類に当てはまるため、妊娠中は慎重に扱うのが安全側の判断です。
製品ごとの品質管理に差があるため、一律に「絶対にダメ」とまでは言えません。それでも妊娠中は、「わからない・確認できない」リスクを避けるという考え方が基本になります。
特に妊娠初期(〜12週ごろ)は、赤ちゃんの体の基礎が作られる時期です。食中毒リスクのある食品は、この時期に限らず妊娠中を通して慎重に扱いましょう。
加熱調理でリスクを大幅に下げる方法
「ハタハタ寿司の風味は好きだけれど、そのまま食べるのは不安」という場合は、加熱するという選択肢があります。
鍋に入れる・フライパンで焼く・スープにするなど、中心まで75℃以上で1分以上加熱すると、リステリア菌を含む多くの食中毒菌は死滅します。
加熱すると発酵の風味は少し変わりますが、旨みは活かせます。妊娠中に食べるなら「加熱してから」が現実的なリスク低減策です。
ただし、加熱しても塩分は減りません。量は1食30g程度にとどめて、ほかの食事で塩分を控えることも忘れないようにしましょう。
ハタハタを安全に楽しむ代替料理と代替食品
ハタハタそのものは、しっかり加熱すれば妊娠中でも楽しめる魚です。ハタハタ寿司にこだわらなければ、次のような楽しみ方があります。
ハタハタの塩焼きは、中心まで火を通せば食中毒の心配が大きく減ります。塩の量を自分で調整しやすいのも扱いやすいポイントです。
発酵の風味が恋しいときは、魚を使わない発酵食品(ぬか漬け・甘酒・納豆など)で楽しむ方法もあります。妊娠中は「発酵していても生の魚介はそのまま食べない」と覚えておくと、迷いにくくなります。
| 食べ方 | リスクの程度 | 妊娠中の考え方 |
|---|---|---|
| ハタハタ寿司(生・未加熱) | 高い(リステリア菌・塩分) | 避けるのが安全側 |
| ハタハタ寿司を十分加熱(75℃・1分以上) | 中(塩分は残る) | 少量なら検討できる |
| ハタハタ塩焼き(完全加熱) | 低い | 塩分に気をつけつつ楽しめる |
| ハタハタ入り鍋・汁物(完全加熱) | 低い | 塩分管理しながら楽しめる |
まとめ|ハタハタ寿司は妊娠中の食べ方に注意が必要。加熱か代替料理で楽しもう
ハタハタ寿司は秋田の伝統的な発酵食品ですが、妊娠中は発酵食品・生魚・塩分の3つの観点から慎重に扱いたい食品です。
最も注意したいのは、加熱していない発酵魚食品としてのリステリア菌のリスクです。妊娠中の感染は流産・早産につながるおそれがあるため、未加熱のまま食べることは避けるのが安全側の判断です。
ハタハタ自体は水銀の注意対象ではなく、加熱したハタハタ料理なら妊娠中でも楽しめます。ハタハタ寿司を食べたい場合は、中心まで75℃以上で1分以上加熱してからにして、量は1食30g程度・塩分は1日トータルで調整しましょう。
地元の味や思い出の食品をあきらめる必要はありません。加熱して楽しむ・別の料理で風味を楽しむなど、妊娠中なりの工夫を見つけていきましょう。
「食べてよいか迷ったら食べない」が妊娠中の食品選びの基本です。どうしても食べたい場合は、加熱の方法も含めて主治医に相談してみてください。
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