福島のお正月といえば、いかにんじんを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。するめとにんじんを甘辛いたれに漬け込んだ郷土料理は、シャキシャキした歯触りと深い旨みで、食事の箸休めに欠かせない一品です。妊娠中に食べていいのか、気になるところです。
「するめって生のイカじゃないから大丈夫?」「塩分が多そうで心配」「以前から食べていたけど妊娠したら気をつけた方がいい?」――そんな疑問を持つ方のために、いかにんじんと妊娠中の付き合い方をお伝えします。
先に結論をお伝えすると、いかにんじんは妊娠中でも少量であれば楽しめます。するめは乾燥加工品のため、生のイカで問題になるアニサキスのリスクも低くなっています。気をつけたいのは、漬けだれからくる塩分です。
この記事では、いかにんじんの原材料と栄養・するめと妊娠中の安全性・塩分の影響・上手な食べ方まで、順番にまとめました。
いかにんじんってどんな料理?原材料と製法を確認
いかにんじんは、福島県の代表的な郷土料理で、農林水産省「うちの郷土料理」にも掲載されています。するめ(乾燥イカ)とにんじんを細切りにして、醤油・みりん・ざらめなどの甘辛だれに数日間漬け込んで作ります。日持ちの良い保存食として、昔から家庭で作られてきました。
妊娠中に気になる食材のポイントを、ひとつずつ確認していきましょう。
するめ(乾燥イカ)と妊娠中の安全性
生のイカが妊娠中に話題になるのは、アニサキスという寄生虫のリスクがあるためです。アニサキスは加熱(70℃以上)または冷凍(マイナス20℃で24時間以上)で死滅しますが、酢漬けや塩漬けでは死滅しないことが知られています。
いかにんじんに使われるのは「するめ」と呼ばれる乾燥加工品です。乾燥の工程でアニサキスのリスクは大きく下がるため、するめを使ったいかにんじんは、生のイカよりリスクの低い食べ方といえます。
また、「するめを食べると流産する」という俗説を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、これには医学的な根拠がありません。するめ特有の問題ではなく、実際に気をつけたいのは塩分のとりすぎです。
にんじんのβ-カロテン、妊娠中は大丈夫?
にんじんには豊富なβ-カロテンが含まれています。β-カロテンは体内でビタミンAに変わりますが、食品由来のβ-カロテンは体が必要とする分だけ変換される仕組みのため、とりすぎの心配は少ないとされています。
ビタミンAを多く含むレバーなどの動物性食品は、妊娠初期に食べすぎると赤ちゃんへの影響が心配されますが、にんじん由来のβ-カロテンはこの心配にあたりません。いかにんじんのにんじんについては、過剰摂取を心配する必要はありません。
するめの栄養成分|意外と豊富なたんぱく質とタウリン
するめ(乾燥イカ)は水分が抜けているぶん、栄養素が凝縮されています。栄養値の出典は食品成分データベース(文部科学省)です。
| 栄養素 | 含有量(100gあたり) |
|---|---|
| たんぱく質 | 約69.2g |
| エネルギー | 約304kcal |
| タウリン | 豊富に含有 |
| DHA・EPA | 含有 |
たんぱく質の割合は食品のなかでもかなり高く、タウリンも豊富です。ただし、いかにんじん1食に使われるするめはごく少量です。栄養源として期待しすぎるのではなく、食感と旨みを楽しむ一品として適量をいただくのが向いています。
いかにんじんの塩分量|妊娠中の食事で最も注意したい点
いかにんじんを妊娠中に食べるとき、いちばん意識したいのが塩分です。漬けだれに醤油・みりんを使うため、見た目の割に塩分が高くなりやすい料理です。
いかにんじんの塩分量の考え方
家庭のレシピによって幅がありますが、醤油ベースのたれに漬け込む料理のため、1人前(約50g)で食塩相当量がおよそ1g、たれをよく吸ったものでは2g近くになる場合もあります。妊婦の1日の食塩目標量(6.5g未満)の2〜3割を、副菜ひと品でとる計算になることもあります。
お正月によく一緒に並ぶ数の子・田作り・お雑煮なども塩分を含む料理です。食卓全体で塩分のトータルが増えやすい場面なので、いかにんじんの量は意識して控えめにしたいところです。
妊娠高血圧症候群と塩分の関係を知っておこう
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、妊婦の食塩相当量の目標量は1日6.5g未満と定められています。塩分を長期的に多くとることは、血圧上昇の一因になりえます。
妊娠20週以降に血圧が上がる妊娠高血圧症候群は、重症化すると母子ともに影響が出る場合があります。塩分の多い食事が直接の原因ではありませんが、高塩分の習慣はリスク要因のひとつとされています。もともと血圧が気になる方や、むくみが出やすい方は、特に塩分に注意しましょう。
アレルギーの可能性にも注意を
イカ(軟体類)アレルギーのある方がするめを食べると、症状が出ることがあります。かゆみ・じんましん・口の腫れ・呼吸のしづらさなどが現れた場合は、すぐに受診してください。これまでにイカでアレルギー症状が出たことのある方は、いかにんじんも避けるのが無難です。
妊娠中は免疫の状態が変化しやすく、それまで平気だった食品でも反応が出ることがまれにあります。久しぶりに食べる場合は、少量から始めて様子を見るようにしましょう。タコ・エビ・カニなどにアレルギーのある方は、共通のアレルゲンを持つことがあるため、かかりつけ医に相談してから食べるようにしてください。
妊娠中にいかにんじんを楽しむための工夫
いかにんじんは、食べてはいけない料理ではありません。量と食べ合わせを工夫することで、妊娠中でも福島の郷土の味を楽しめます。
食べる量のめやすは「少量・食べすぎない」
妊娠中にいかにんじんを食べる場合は、1食あたり大さじ2〜3杯程度(約30〜40g)が目安です。お正月のおせちの一品として少量楽しむ分には、食べすぎにはなりにくい量です。
毎日食べることや、一度に大量に食べることは避けましょう。他のお正月料理との組み合わせで塩分が増えやすいため、いかにんじんをいただく日は、他のおかずの塩分を特に意識してください。
塩分バランスを整える食べ合わせ
塩分の多い食事のあとは、カリウムを多く含む食材を意識して取り入れましょう。カリウムには、ナトリウムの排出を助ける働きがあります。
いかにんじんのにんじん自体にもカリウムは含まれていますが、料理全体の塩分が高いため、補完としては十分ではありません。ほうれん草・里芋・じゃがいも・ブロッコリーなど、カリウムの豊富な野菜を添えることで、塩分バランスを整えやすくなります。
水分補給で塩分を流す習慣を
塩分の多い食事のあとは、水分をしっかり補給することが大切です。白湯・麦茶・ノンカフェインのお茶をこまめに飲むことで、体内の余分なナトリウムを排出する助けになります。妊娠中は一度に大量に飲むよりも、少量をこまめに飲むほうが体への負担が少なくなります。
妊娠中はもともとむくみが出やすい時期です。塩分を多くとった日はむくみが強くなる場合があるため、夕方以降の食事では特に塩分をひかえめにしましょう。カリウムを多く含むさつまいも・ほうれん草・里芋は、お正月の食材としても手に入りやすいものです。体が重だるいと感じたら、塩分のとりすぎを疑って水分補給を心がけてみてください。
まとめ|いかにんじんは塩分に注意しながら少量を楽しもう
妊娠中のいかにんじんは、少量であれば過度に心配する必要はありません。するめは乾燥加工品のため、生のイカで問題になるアニサキスのリスクは大きく下がっています。「するめが流産を引き起こす」という話にも医学的な根拠はありません。
いちばん注意したいのは塩分です。漬けだれの醤油で塩分が高くなりやすいため、量は大さじ2〜3杯程度に抑えて、他のお正月料理との塩分の重なりを意識しましょう。
福島の郷土の味をお正月に少量楽しむことは、十分にできます。カリウムを含む野菜と組み合わせて、水分補給も忘れずに続けながら、帰省先での食事を無理なく楽しんでください。
お正月のおせちは、地域によってまったく異なります。福島のいかにんじん、山形の鯉のうま煮、秋田のハタハタ寿司など、各地の伝統食はその土地の気候・文化・歴史が詰まった食の遺産です。妊娠中だからこそ、体にやさしい量で地域の食文化の豊かさを感じてみてください。
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